DUAL-IPA

Training Season

新しき年の初めの2冊

 元日に発生した能登半島地震から1週間が経ちました。120名以上の方の死亡が確認され、未だ安否不明者は190名以上です。石川県では28000人以上の方が避難生活を強いられています。
 災害は時を選ばず起こることをあらためて思い知り、決して他人ごとではなく明日は我が身であることを痛切に感じました。私にはわずかばかりの募金をすることしかできません。ブログなどやっている場合かなどとも思うし、PCやスマホを当たり前のように使える日々のありがたみを思ったりと、益体のないことばかり考えて新年を過ごしました。

 そんな中、年末年始、私はIT系から距離を置いて、図書館で2冊の本を借りて読みました。

  独学の地図 荒木博行著
  日本の視覚 現代ビジネス編

独学の地図

 私のこれまでの学習方法は成果の乏しいやり方だったと気づかされました。自分の内なる「疑問」を学びの出発点とするのではなく、資格試験や知識の維持・習得を目的としたものでした。そうではなく、社会生活をおくることそのものが疑問の土台であり、学びの場なのです。
 テキストを買ってきたり、Webサイトを検索してただ読み通すだけで得られるものは、単なる「感想」に過ぎないのでした。
 それっぽい一般論を得るだけでは不十分で、経験の前後の「差分」を削り出すことが必要です。読後に自分との対話をすることによって、得られたものを掘り下げていき、自分だけの具体論を見つける必要があるのです。この作業では「大きな学び」は得難く、些細な「2ミリの学び」を削り出すものなのです。
 また、「独学」であっても「他者」の力を積極的に借りることが有用です。他者に伝えようとすることが、自分の学びに磨きをかけ洗練させる効果があるのです。これまで私は勉強会等の意義を、話者が他者に知識や気づきを与えるようなイメージでなんとなく捉えていましたが、話者自身の学びを最大化することを主目的とすべきなのだと感じました。

日本の視覚

 講談社「現代ビジネス」に掲載された16人の著者による16編の論考を集めたものです。
 「日本人は集団主義」という幻想 (高野陽太郎
 日本人が「移動」しなくなっているのはナゼ? 地方で不気味な「格差」が拡大中 (貞包英之)
 日本のエリート学生が「中国の論理」に染まっていたことへの危機感 (阿古智子)
 日本の学校から「いじめ」が絶対なくならないシンプルな理由 (内藤朝雄
 女性に大人気「フクロウカフェ」のあぶない実態 (岡田千尋
 性暴力加害者と被害者が直接顔を合わせた瞬間・・・一体どうなるのか (藤岡淳子)
 「差別」とは何か? アフリカ人と結婚した日本人の私がいま考えること (鈴木裕之
・・・
などなど。いずれも一般論で片づけてしまって見過ごしてしまいがちなことに、深堀した視点によって本質的な部分に気づかされるものでした。
 『自然災害大国の非難が「体育館生活」であることへの大きな違和感 (大前治)
に関しては、今まさに厳冬の北陸で起きていることと重なり、毎年のように自然災害で困難な生活を余儀なくされ、災害関連死で犠牲者が増える現状の改善を考えさせられました。

 一日も早く、被災者の皆様が日常を取り戻すことができることを願います。